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【少年を飼う】第1話「甘える」 ネタバレ感想

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鉄の女と称されるほどの独身バリキャリウーマン・森川藍。

藍は30歳の誕生日にとびきり綺麗な少年を拾う。

そして孤独を抱えたふたりの、奇妙な同居生活が始まるーー。

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注意:ネタバレを含みます!

ーーー目次ーーー

第1話 「甘える」

>>第2話 「君のための城」

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あらすじ

 まだ肌寒い3月の月の綺麗な夜の出来事。

30歳の誕生日、藍は飲んで家へ帰ると玄関の前に少年が一人うずくまるように座っているのを見つける。

翌朝、目を覚ますと同じベッドの隣には布団にくるまる少年の姿が。全く記憶にない藍は驚き混乱する。

少年「……あ。あんた……」

少年が目を覚ましたが、藍は仕事があるから戻るまで待つよう言い、少年を一人部屋に残し逃げるように出勤してしまう。

会社での藍は、常に成績上位、納期の鬼、完璧な仕事ぶりで上司も唸らす全後輩憧れのクールビューティー、令和の”鉄の女”などと言われるほどのバリキャリだ。それゆえに妬みもあり負けぬよう努力をしているが、それすら綺麗にこなしてしまうため「甘えられない女は可愛くない」「デキる女アピール痛すぎ 絶対結婚したくない」など陰口を言われることも多かった。実際、元カレにも同様の理由でフラれている。

藍(バリバリ働いて稼いで自分の力で生きていく。鉄の女、上等。どうせ慰めてくれる人もいないのに、甘えたって得することなにもないじゃない。)

 

仕事を終え家に戻ると、部屋は真っ暗。電気を付けると、少年はソファーの上で眠ってしまっていた。

藍(朝も思ったけど、綺麗な子だな。お人形さんみたい…)

藍が少年に手を伸ばしたとき、少年がふと目を覚まし「森川藍」とフルネームで名前を呼んだ。なぜ名前を知っているのかと驚いていると、少年は起き上がってこう続けた。

少年「あんたの姉さんにここに来るよう言われた」

慌てて別の部屋から姉に電話をかけると、彼女は空港でのんきに答えた。少年は自分の再々婚相手の連れ子で名前を凪沙ということ。海外転勤で凪沙をおいて夫婦二人で赴任すること。

藍「だからってなんで私の所に」

姉「だってその子~、ちっとも私になつかないんだもん」

血が繋がっていないとはいえ、親であることの無責任さに藍は怒るが、飛行機が出るからと軽くあしらわれてしまう。そんな様子に困る藍だが、一方で無関係の少年を拾ったわけではないことに安堵もした。

凪沙のいるリビングに戻った藍は、二人分の飲み物を入れて考える。その様子を見た凪沙は、邪魔にならないようすぐに出ていくと言う。しかし藍には、こんな迷子の猫みたいな子を放り出すことはできなかった。

さきほど凪沙に父の考えを聞いたら、父親は全部人任せだから知らないと言っていた。もともとは親ふたりの放漫が原因だ。

藍「しばらくここにいなさい。先のことは追々考えましょう」

凪沙「……あんたがいいなら」

こうしてふたりの奇妙な同居生活が始まった。

……………

………

藍は仕事をはやめに切り上げ、凪沙のいる家に帰る。

凪沙「…おかえりなさい」

帰ったら誰かがいる生活も意外と…と思ったところで、凪沙の髪が濡れたままになっていることに気がつく。ぼ~っとして放置しようとする凪沙に、藍はドライヤーで乾かしてあげることにした。気持ちいいのか凪沙もうとうとしている。

凪沙「仕事…大変なの?」

口数の少ない彼が突然喋ったことに驚く。どうやら初めて会った日に泥酔状態で愚痴を言ったらしい。そして凪沙は「しんどいなら休めばいいのに」と続けた。

気を遣われている。16歳の男の子なんて別世界の生き物かと思ってたけど、

藍「平気よ、大人だもの」

意外と悪くないかも。

……………

………

会社で藍は同僚が起こしたトラブルの後始末に奔走する。自分以外に動ける人がいなかったので仕方ない。クライアントに必死で頭を下げるが、仕事ではなく藍自身についてセクハラまがいな悪態をつかれてしまう。

ぐっと堪えるが、同じようなことを何人にも言われてきた藍は一人ではもう堪えられなかった。家路を急ぎ、凪沙の顔が見たいと思う。

しかし、帰宅しても家の中はもぬけの殻。ああ、凪沙は出ていったんだ、と悟りソファに倒れ込む。やらなければいけないことを羅列して、自分の立て直す算段を立てて、必死で辛いことをごまかす。

藍(これまでだって、ひとりでやってきたんだから)

ふと目を閉じた。

 

しばらくして、カタンと音がして、誰かの手が目元へ伸びてきた。

凪沙「なんで泣いてるの」

藍が驚いて目を開けると、自分を覗き込む凪沙がいた。どうやら彼は散歩に行っていただけだったらしい。藍は泣きながら怒る。

藍「勝手にいなくならないでよ!!心配するでしょ…!」

その言葉に凪沙は、言葉なく目を見開いた。

14歳も下の子に八つ当たりしてしまった藍は自己嫌悪でさらに涙が止まらない。その姿をみて、凪沙はそっと猫のように舌で涙を拭う。

凪沙「ごめん」

もう何年も人前で泣いていなかった藍は、涙の止め方がわからず、さらに大泣きしてしまった。凪沙の気遣いでせき止めていた涙が一気に溢れてしまったのだ。

その夜は全てを放置し、凪沙と一緒にソファーにもたれ、藍はものすごくひさしぶりに昼までぐっすり眠ってしまうのだった。

 

感想

 最初の1話目は、藍の孤独をメインに迷い猫のような少年・凪沙と出会い、彼(他人)の優しさに”甘える”ことを知るところでしたね。

のちに藍が語っていることでもありますが、凪沙がまだ16歳で庇護が必要な状態であることで、彼女が他人に対して自分の時間を費やすことを自発的に行える状況が作られています。そしてそれがいい方向に作用してる。

藍は自分で生きる力をつけようと頑張っているだけなのに、可愛げがないとか、鉄の女だとか、ひどい言われようです。美人でおしゃれで言葉遣いも丁寧できれいで、とても素敵な女性なのに。元カレやおっさん、藍をやっかむ同僚たちからの女性蔑視の偏見を受けています。そんな人ばかりではないことは私も社会に出て知っていますが、あまりにひどい言われようです。ひとりで堪えていた藍を尊敬します。私なら病んでる(そもそもそんな会社辞めてる)。

対して凪沙も、猫のように気ままな穏やかな男の子ではありますが、親からの愛情や関心には諦めのようなものが垣間見れます。自分のことにも無関心な感じがありますね。

藍がドライヤーで凪沙の髪を乾かしてあげようと彼の頭に触れたときも少し驚いたようでしたし、散歩している間に帰ってきた藍(ご乱心)が心配したと泣きながら怒ったときもとても驚いていました。そういう関心のもたれ方を家では受けていなかったんだろうと思います。心配されるとも思ってなかったふうでした。

でも凪沙は優しくて、他人の感情を敏感に感じ取っています。

最後にふたりで1つの毛布をかぶり、ソファーで寄り添うように眠るところも、どこか仕事で辛いことがあったこともどこかで感じ取って慰めるようにそばに居てくれたのかもしれません。また凪沙自身も、自分のことを心配してくれ、関心を持ってくれている藍という存在に”甘え”ているのかもしれませんね。

 

まとめ

孤独で他人に”甘える”ことを知らないふたりが、お互いの存在に”甘える”最初のエピソードでした。

ひとは一人では生きていけませんから、こういう存在の人がいることは大切なことですね。ふたりの渇きが癒されますように。 

 

★第2話 「君のための城」